東亜通商株式会社様

ホームページ:http://www.toa-tusho.co.jp/

 東亜通商株式会社様は、1986年6月に創業、鋼材加工に優れた技術を持つ中堅鋼材加工メーカー兼鋼材商社です。
 2009年4月から2年間のコンサルティング契約をし、1年目にISO9001認証を、2年目にISO14001認証を取得されました。コンサルティング担当は内藤でした。

 コンサル終了後1年を経過された、ISO認証取得の成果についてお聞きしました。

入り口には、ISO認証工場の標識が掲示されています。

 今回面談いただいたのは、市川恵朗代表取締役、ISO管理責任者である高橋正子常務取締役の御両名様です。まずは市川社長から、取組み当時のいきさつについて伺いました。

○市川社長
 4年前に代表取締役に就任しました。その時社員に対して話した私のビジョンの中に、ISOを取得するということがありました。一口に言えば、社員のレベルアップが目的です。
 長年営業に携わっていましたので、その立て直しを図るべく社長に就任したのですが、来てみると販売会社なのに営業スタッフの人数も少なくその部分が弱体化しており、お客様とのコミュニケーションも取れていません。我が社の強みもお客様にほとんど伝わっていないと感じました。これではいけないと思いました。
 我が社は建設業界に特化したものを販売しているわけで、金額的な伸びはそんなに望めないと思っています。数年前までは高度成長期でいろいろな躯体や橋など鉄の需要も高かったものですが、バブルが崩壊し公共工事も減少、需要は低くなっています。ただ、この産業は、人間が生きている限り欠かせないものです。まだまだ可能性はあると考えています。
 震災後の復興需要に期待感がありましたが、現実にはそうした需要は大企業の関連会社に行ってしまって、我々のような地方の会社にはなかなか結び付いてはきません。ですが、そこをあきらめず、努力してISOと取得しようとしたのも、それが無ければそうした話が来ても全く土俵に上がれないということがあるからです。それは、長年の営業経験から痛感していました。

市川社長です。
笑顔を絶やさず導入のいきさつなど詳細に話してくださいました。
情報はオープンをモットーにされています。

●東亜通商様は、社員の方が全員参加でコンサルを受けておられましたね。
○市川社長
 はい、月に2回の土曜の休みを利用しました。自発的に出席し勉強してくれた従業員には本当に感謝しています。
 営業マンのスキルを上げるためのセミナーはたくさんありますが、我が社の場合、加工や配送など、他の部署の社員が多いので、そのようなセミナーは合わないのではないかと考えました。最終的には、ISOを利用して社員の意識やスキルを全体に上げていこうと考えたのです。
 社員には、ISOを取ったからと言ってすぐに年商のプラスになるとは考えず、もっと長いビジョンの中で、社員の考え方やスキルを含めて少しずついろんなことで向上していければいいと言っていました。
 ISOの取り組みを始めてすぐ、リーマンショックというものがあって、瞬く間に業績が急降下しました。リーマンショックは外的要因ですが、我が社の場合、それよりもむしろ内的要因の方が大きかったのではないかというのが私の認識です。少し代償が大きかったですが、今思えば、ISOに取り組む中でそのような大きな出来事があったことは、社員に危機感を持ってもらう良い機会だったのではないかと考えています。
 我が社は5月が決算なのですが、3月にISOに取り組みを始めて最初の決算のときは黒字でした。その後リーマンショックがあり2年目の決算では大きな赤字になりました。当初から私の中で覚悟はしていましたので、社員には、決して会社はつぶさないので安心して働いてくださいと言いました。
 また、社員一人一人と面談し、それぞれの希望や意見を聞きました。そんな中で、ISOに取り組み、PDCAという言葉も知らなかった社員たちがP(プラン)の大切さに気付くようになり…少しずつ知識と理解を深めていったのです。

●ISOに取り組む中で、仕事への意識や社長のそうした思いというものは、浸透してきたとお考えですか。
○市川社長
 2年前に比べ、間違いなく浸透してきています。全員が営業マンであるという意識を持ってもらうよう活動してきました。確かに我が社は、一般ユーザーとの接点は少ないですが、それでも、鋼材を販売してそこから会社の利益を生み出しているわけですから、我々も、客商売であると。
  何かトラブルがあったとしても、それはお客様にとって不利益ですから、会社の問題として社員全員で解決をするというのが、我が社の理念です。

お二人に、一時間半ほどお話を伺いました。
その表情には、今までやってきたことへの自信がにじみ出ています。

●認証を取得されて一年ですが、対外的な営業効果というのはありますか。
○市川社長
 あるとは思いますが、実感としてまだそんなに感じてはいません。ただ、現在の売り上げを占める割合として大きいのは鉄工所なんですが、それもやりつくした感があり、新規の様々な業種に営業活動をするときには、ISOの取得は絶対に必要と考えています。
 これまでは内的なことのためにISOをやってきましたが、これからはむしろ外部的なことに効果が表れてくるのではないかと期待しています。

●管理責任者として高橋常務は、ISO導入後の従業員の皆様の変化に、お気づきの点はおありでしょうか。
○高橋常務
 ISOを通して、顧客満足ということが、言葉だけではなく理解することができたと思っています。お客様に満足していただかなければ我が社を選んでもらえないということを、社員全員が活動の中で理解することができました。
  最初は、文書を書くことからのスタートでしたが、2年目になると、『書く』から、今度はそれを『どうする』ということに変わってきました。クレーム一つにしても、全員で解決しようと積極的に各部署から問題解決策や改善案を発信するようになったのです。問題というのは、結果として一人の人が起こしているように見えますが、本当はそうではない。営業・事務・現場・配送という流れの中でチェックされずにお客様のところまで問題が行ってしまう。そのようにして起こった問題というのは決して一人のものではなく会社全体のものである、ということを全員が理解しています。そういった点で、ISOは本当の力になっています。
 会社の実力というのは、社員一人一人の思いとか仕事に対する取組みとか、そうしたものが全部積みあがったものだと思っています。そんな実感から、本当にISOに取り組んで良かったと感じています。そして、全員でやったからこそこうした共通意識を持て、会社の土台になることができたのではないでしょうか。

●最後に、なぜ弊社東北環境技術とコンサルティング契約をされたのでしょうか。他にもコンサルタント企業があったと思いますが。
○高橋常務
 多数の企業から絞り込み、御社を含めて2社が候補に挙がりました。そこで、従業員全員出席で2社にコンサルのプレゼンテーションをお願いしました。最終的には御社の内藤さんのプレゼンがわかりやすかったという意見が多かったのです。当事者全員が決めたことですから、しっかりと認証取得にもまい進するだろうと決めたのです(笑)。
 内藤さんは、お仕着せの指導ではなく、当社の現状に沿って有効に活用できるよう骨を折っていただきました。初歩的な質問にも丁寧に回答していただき、全員のモチベーションが上がる工夫もしていただきました。本当に感謝しています。その結果、全員が内部監査員講習を受け活動できることにつながったと思います。

 

本社と工場は、同じ棟にあります。
訪問受付と退出の際には、皆さんに元気な声で挨拶をいただきました。

【編集後記】

 市川社長から、開口一番「ISO認証が絶対必要というわけではない、QMS・EMSの構築を通じて社員の意識を変えていきたい。ISOはそのための手段である。」という熱い思いをお聞かせいただきました。笑顔で穏やかにわかりやすく東亜通商様が抱える問題を述べられ、社員の教育が大事であると力説する言葉のはしはしに、社員様への愛情が溢れていました。また、高橋常務の言葉にも、全員でISOに取り組み、社員の意識改革に成功された自身が溢れていました。
 ISO取組2年目の赤字について、正直にお話しいただきました。気になるのが現在の状況ですが、今期、リーマンショック当時に比べ売り上げは2倍になったそうです。ISOの取得による営業効果でしょうか。市川社長は、まだ外的な効果については実感されていないとおっしゃっていました。
 私には、東亜通商様の社員の方全員によるご努力の賜としか思えません。社員の皆さんが、ISOを活用しながら懸命に顧客満足を追求された結果のように思えるのです。
  ところで、本社1Fにドアが解放されているトイレがあることに気づきました。その反対側には男性用と女性用のトイレが別にあり、どちらもドアはあけられていません。疑問に思っていると、配送業者の方が、解放されているトイレに入っていくではありませんか。配送業者の方は、一分一秒も惜しんでいるのです。次の配送先に向かうために早足で去っていきました。きっと、配送業者の事情に配慮して解放してあるのでしょう。ここにも、配送業者の満足度を上げようという市川社長の哲学が実践されているようです。
 訪問受付の際と退出の際、事務部門の方が立ち上がり元気な声で挨拶されました。こちらも最後は、「ありがとうございました。」と、自然に大きな声が出てしまいました。

2012年6月