有限会社相馬ブレード様

ホームページ:http://somablade.co.jp/

 福島県浜通りの最北端、相馬市に隣接する福島県新地町で金属研磨加工を営む有限会社相馬ブレード様は、東日本大震災で自宅、会社、全財産を喪失しました。藤田修代表取締役社長の指揮下、わずか2ヶ月後に新地町駒ヶ嶺地区仮設事務所・倉庫・工場で事業を再開させています。
 石川島播磨重工(IHI)が相馬中核団地に進出したのに合わせて東京から移転し、3.11までは同じ新地町の谷地小屋地区で順調に事業を営んでいました。新工場を開設後3年半で、津波によって「自宅、会社」が全壊したのです。
 今回は、事業再開にISOがどのように関わったのかお聞きしました。資本金は300万円で2004年3月に有限会社を設立しました。今期売上は、通年の 75%まで回復しているそうです。なぜ2ヶ月後に再開できたのか、その真相は最後までお読みくだされば理解できると思います。

笑顔が似合う社長さんです。
2ヶ月で会社を再建したエネルギーは、
どこから出てくるのでしょうか?

●まず、ISO9001認証を取得した理由をお聞かせください。
○藤田社長
 リーマンショックで売上が半減したこともあり、社内の仕組みをもう一度見直そうと私が判断しました。大手企業様へ納入していることもあり、ISO認証取得することが、顧客の要望にも添うことだと理解しました。

●2008年8月から約10ヶ月間、清和がコンサルさせていただきましたが、印象はいかがだったでしょうか?震災後は電話による無料コンサルも引き受けて、貴社の復興に少しでもお役に立ちたいと話していました。
○藤田社長
 最初、当社の仕組みにISO9001要求事項を合わせるよう、私からお願いしました。国際基準ですが、当社の使い勝手を良くしなければ意味はありません。清和さんは、その要求に応えてくれたと思います。優しい方で、震災以降も何かと問い合わせても丁寧に解説してくれます。家庭を例にあげると、雑然と置いてあった箪笥の中身を、和服・洋服に分けてくれて、衣類ごとに整理してくれた方かなと思っています(笑)。必要な書類をさっと取り出せるような文書管理もできるようになりました。

●なぜ、東北環境技術へコンサルを依頼されたのでしょうか?
○藤田社長
 取締役部長が選定したはずです。経緯はわかりません。たくさんの企業の中から選定したと思います。

●認証取得後、社内の変化でお気づきのことはお有りですか?
○藤田社長
 PDCAが当たり前という雰囲気になりましたね。そして製品の管理置場も目に見えて整理整頓されました。社内の雰囲気が改善されたというか、顧客が訪問されてもそのままの姿を見てもらえると思います。恥ずかしくない環境が整えられたと認識しています。

●ところで、すべてを喪失して2ヶ月後になぜ、事業を再開できたのでしょうか?
○藤田社長
 震災直後、受注していた製品も納品できず顧客様へ謝罪訪問をいたしました。その際、すべての顧客様からあたたかいお言葉をかけていただきました。納品できる体制が整うまで待っているよと励まされて、ついつい調子にのり、2ヶ月で元の会社に戻しますと言い切ってしまったからでしょうね(笑)。

●事業再開のご苦労はさぞや大変だったでしょうね。
○藤田社長
 中小企業基盤整備機構、国、県、新地町には、本当にお世話になりました。経営者として事業を早く再開すれば従業員の生活を安定させることができる、地域の雇用を守ることは私の役目であると気づいたことが、早期再開を後押ししたと思っています。震災後一人も解雇せず生活できるように段取りもしました。リーマンショック時の従業員22名が、現在33名まで増えて、仕事も順調に推移しているのも従業員のおかげであると思っています。

震災後に事業を再開した工場です。

左側に、この白い看板が掲示されていました。

●震災以降、藤田社長の仕事や経営に関する考え方も変わったとお感じでしょうか?
○藤田社長
 震災前は売上を増加すれば会社も良くなり、従業員の待遇も向上するという考えでした。しかし、震災以降は、考え方が逆転しました。従業員の安全を守り従業員の待遇を良くすれば、従業員は仕事で精一杯努力してくれます。その結果、会社も良くなるのだという考えに変わりました。そのためには社内の雰囲気を明るくし、笑顔が絶えない会社を維持するのが私の役目であると気づいたのです。だからいつも私はニコニコしているでしょ(笑)。
○藤田社長
 先ほど、事業再開の苦労という話になりましたが、ゼロからのスタートではないのです。私には、従業員もおりました。大津波で大洋に流された船を想像してください。船長がしっかりしていれば、従業員に号令をかけて櫓を漕ぎ前に進むものです。新しい事業や起業をするのではなく、知見や経験を持つ人間が新しい場所と工場を得て再出発するのです。私にとっては一度経験したことを土台にできるので、失敗は少ないしチャレンジのしがいがあると前向きに捉えると肩の力がすっと抜けました。この歳でチャレンジするものができたので張り切っています。復興は、プラス思考じゃないとできませんね。

●一代で事業を築いた経営者の方は、なんでも積極的に前に進む方が多いようです。頭で考えるより先に行動に移せという考えをお持ちでしょうか?
○藤田社長
 行動に移さないと行動しない理由をたくさん考えつくものです。例えば復興でも初期に行動に移さないと、復興できない原因ばかり人間は後から考えつくものです。震災から1年9ヶ月経過して、今から復興しようなどという経営者はいないでしょう。復興したいならとっくに準備を終えてスタートしています。今から復興するなどという会社はスタートでつまずいても早急に立ち上げようという気魄がなかったのではないでしょうか?悪い方にばかり人間は考えつくつものですから、 まず走ってみてから考えれば良いのです。全知全能にかけて、いや神様じゃないので全知全霊をかけて突っ走るとなんとか目的を達成することができるものですよ(笑)。

●社長さんは関西出身ですから、なんでもプラス思考で考える習慣が身についているのではないですか?
○藤田社長
 そうかもしれませんね。あまり深刻に考えない方です。悩んでくよくよするよりまず行動すれば何とかなる、何とかできるという楽観的な性格ですね。経営者が苦虫を噛み潰しても何も良いことはありません。笑う門には福来るですよ(笑)。

清潔な仮設工場内で、従業員の皆様が
仕事に集中されていらっしゃいました。

【編集後記】
  藤田社長からお話をお聞きして、なぜ2ヶ月で事業を再開できたか良くわかりました。従業員の雇用を真っ先に考えて事業を再開すれば雇用も確保できるし、顧 客満足度も達成できると考えたようです。勝算もないのに顧客へ2ヶ月で再建すると言うことで、有言実行の戒めとしたようです。何とかなるというポジティブ な考え方で事業を再建して現在に至っており、順調に従業員も増やされています。
 工場従業員の方も明るくニコニコしながら「いらっしゃいませ」と 挨拶をしてくれました。社長さんの性格や人柄が従業員へ伝わっているのかしらと思わせるほど良い笑顔でした。インタビューが長くなりそうになると、女性従 業員の方が、「社長は話好きですから2時間たっても終わりませんよ。早めに切り上げることをお薦めします。」と笑顔で注意してくれました。社長さんもニコ ニコしながら、「はいはい、私は話好きですよ。時間の観念もありません。」と、受け流していました。
 社長さんは、現在も仮設住宅にお住まいで す。感想をお聞きすると、「快適ですよ。色々な方とお話しできるので楽しい。」と話されていました。なんでもプラス思考で捉えるからこそ苦労を楽しみへ変 えてしまうのではないでしょうか。ところでインタビューの間も社長さんは私へたくさんの質問をされました。その質問に回答するためインタビュー予定時間を 大幅に費やしてしまいました(笑)。好奇心の塊の方のようで疑問をこちらにぶつけるのです。冷や汗を流しながらお答えしましたので、その部分は割愛させて いただきます。そうしないとどちらがインタビューを受けているかわからなくなってしまいますので(笑)。久しぶりに楽しいインタビュー(?)を経験させて いただきました。
 さて社長さんは、顧客の品質満足度を第一に考えているそうです。企業規模を増大させたために品質に対する顧客満足度が落ちるようでは事業継続の意味はないと断言していました。品質の改善、改良こそが顧客を満足させることであり、従業員の幸福と結びついているそうです。
 最後に、今回の企業訪問記は藤田社長インタビューと改称したほうが良いのではないかと悩んでおります(笑)。笑顔の絶えない職場を訪問するとこちらもほのぼのとして幸せな気分に浸れます。

インタビュアー:有限会社インターナショナル・コミュニケーションズ代表 菅野孝雄
2012年12月